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日本災害看護学会第22回年次大会

大会長挨拶

一般社団法人 日本災害看護学会 第22回年次大会
大会長 渡邊智恵(日本赤十字広島看護大学)

 この度の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により亡くなられた方々に心よりご冥福をお祈りいたします。また、さまざまな医療現場で、自らの命の危険と闘いながら支援活動をされている医療従事者の皆様の献身に対して、心より敬意を表します。さらに、令和2年7月豪雨災害により亡くなられた方に対して、心からの哀悼の意を表します。コロナ禍の下で避難所の創設や運営にご尽力をいただき、今も支援活動をされている全ての関係する皆様に、心からの敬意と感謝を申し上げます。
 さて、日本災害看護学会第22回年次大会は、2020年9月5・6日に広島国際会議場で開催する予定で準備をしてまいりましたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による感染拡大とその長期化が想定され、慎重に検討をした結果、WEB学会に変更させていただくことになりました。安全を確保しながら対面にて現地開催することは困難であり、お互いの命と健康を守るために“離れることが皆様とつながり続ける最良の方法”であるという考えにたち、このような形式をとりました。こうした変更にもからわらず、皆様のご理解とご協力をいただきましたことに、重ねて感謝を申し上げます。
 今回の年次大会のテーマは「災害へのしなやかな対応―備え・寄り添い・つなぐ―」です。残念ながら東京オリンピック2020は延期となりましたが、今年は、広島にとっては原爆投下から75周年、また阪神・淡路大震災からは25周年という節目の年となります。これらのテーマにかかわる特別講演や教育講演を含めて、キーワードである「備え」「寄り添う」「つなぐ」の入ったシンポジウムを企画しました。さらに、今まさにこうしたテーマのように、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)へのしなやかな対応」が求められています。現場の力になりたいと復職した看護師、高齢の両親に感染させないようにホテルから通う医療者の方々、柔軟に対応しつつ、自分のできることを遂行されています。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の緊急企画として、感染看護の専門家からの教育講演とともに医療機関等で対応された皆様に、感謝と同時に少しでも癒しになるようメッセージを発信していきたいと思います。一般演題68題の他に、【特別企画】でCOVID-19感染症関連演題を急遽募集し16題の演題登録をいただきました。現時点での国内での危機対応、医療機関や在宅ケア、メンタルヘルスケアに至るまで幅広い実践活動を共有していきたいと思います。
 WEB学会では、いつでも自由な時間に何度でも視聴できます。このような状況の中にあっても、皆様と一緒にこれらのことを情報共有し、検討することができれば、日本災害看護学会第22回年次大会を開催する意味があったと考えられます。
 新たな生活様式に慣れつつある中で、新たな方法での学会開催となりますが、皆様とのつながりを実感できることを、心より願っております。

2020年8月5日


 2020年9月5日(土)6日(日)、平和都市“広島”で、日本災害看護学会第22回年次大会を開催いたします。平和記念公園の敷地内に位置している広島国際会議場は、近くには原爆ドームがあり、リニューアルされた原爆資料館に隣接しています。東京オリンピックが開催される同じ年に、平和を祈りながら、第22回年次大会を開催できることに大きな意味を感じています。
 これまでに、広島は多くの災害を体験してきました。1945年8月6日の原爆投下により、当時の広島市の人口35万人のうち9万~16万人が被爆から2~4か月以内に死亡しました。原爆投下後の広島は、これから数十年間は草木も生えないとされましたが、復興の道を歩み続け、2020年は75周年を迎えます。自然災害としては、これまでに台風による大きな被害を受け、世界遺産である厳島神社(宮島)は浸水をしましたし、土砂災害の被害を何度も受けています。皆様の記憶にあるのは6.29災害(1999年)、広島土砂災害(2014年)、西日本豪雨災害(2018年)で、地震災害としては芸予地震(2001年)があります。さまざまな災害を体験し、何度もそこから再生してきた広島ですが、それは国内外を含めた多くの皆様からのご支援の賜であり、多くのサポートをいただきましたことに感謝を致します。
 今回のテーマは、「災害へのしなやかな対応―備え・寄り添い・つなぐ―」としました。「しなやか」に込めた意味は、被災してさまざまな影響を受けても、柳の枝のように決して折れることなく、立ち直る回復力、レジリエンスがあるということです。それには、まず、①災害からの被害を極力少なくするために、備えをする力「備え」が必要となります。次に、②復旧や復興をいかに迅速に行うという回復力を支えるための「寄り添う」と「つなぐ」ということが重要と考えました。つなぐには、多職種や他組織と「つなぐ」という意味と、次世代に教訓や災害看護の知見を「つなぐ」ということが必要と考えました。
 災害発生を防ぐことはできなくても、災害からの被害を少しでも軽減し、かつ早期に復興へと歩むことができないものかということに関心を寄せ、災害看護教育・実践・研究活動に携わってきました。災害に対してどう備えていくことが重要なのか、被災後の傷ついた被災地や被災者に対してどうやって寄り添っていくことが必要なのか、さらに被災地の中で活動する他の専門職とどのように連携してつなぐのか、また災害からの教訓をどのように次世代につなぐことができるのかを皆様と検討していきたいと思います。
 中国地方を制覇した“毛利元就”は、国人領主から戦国大名と駆け上がり、家族や地域を大切にした知将であり、数多くの逸話が残されています。今回のサブテーマとしている3つのキーワード「備え、寄り添い、つなぐ」は兄弟の結束を説いたという有名な「三矢の訓」にちなんでいます。「備え、寄り添い、つなぐ」は「しなやかな対応」そのものだと考えております。そのキーワードに沿って、様々な学問分野の専門家からの知見を融合させ皆様と活発な議論を行い、災害看護の発展に向けてともに歩みを進めていきたいと思います。
 多くの皆様に広島に来ていただき、第22回年次大会の中で「災害へのしなやかな対応」について検討していくことができることを願っております。

2019年9月2日

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